フィンランドデザインの巨匠

Kaj Frank / カイ・フランク

1911年、現在はロシア領となっているヴィーブリ(Viipuri)で生まれました。1932年からヘルシンキ中央工芸デザイン学校で家具デザインを学び、卒業。第二次世界大戦でソ連と争い敗北、領土割譲と賠償金支払いの責を負った経験はカイ・フランクを含めたフィンランド国民に大きな影響を与えることとなりました。1945年よりデザイナーとして所属した「アラビア」では1950年よりアートデザイナーに就任、またイッタラ、ヌータヤルビにおいても作品を発表しました。彼は企業デザイナーとしての社会的責任と環境への配慮を強く意識しているため「フィンランドの良心」と称された。数多くのモダンで機能美あふれる傑作を発表した北欧を代表するデザイナーの一人です。

KILTA / キルタ (1952)

1952年アラビアより発表されたカイ・フランクの傑作作品。イッタラより1981年に発表されている人気シリーズ、ティーマ(TEEMA)の原型とされ、従来ヨーロッパで見られたテーブルウェアとは一線を引いた、生活ニーズに対応した独特の色彩と機能性を極めたフォルムは簡素で美しく古典的名作とされるシリーズです。

KF-1(1957)

アラビアで1958年から1962年までの4年間製造されたオードブルディシュ、キルタとは異なり直線で構成されたシャープな形状は当時としては非常にモダンで先進的でありました。ヴィンテージは今なお人気の作品です。。

カルティオ / KARTIO (1958)

ヌータヤルビから発表され1958年から1967年まで製造されました。キルタ(KILTA)を原型として日常で使われることを最大限意識してデザインされており、特にピッチャー、タンブラーはイッタラのもとでロングセラー作品として再販され続けています。

ヌータヤルビ / NUUTAJÄRVI

ヌータヤルビはフィンランド最古の工房を発祥とする1973年設立の老舗ガラス器メーカーでした。しかし1970年からの石油ショックによるフィンランド経済停滞と大量生産を背景に広がるポストモダンの流れもあり、時代に即さない北欧テーブルウェアメーカーの経営は悪化していきます。そして北欧メーカーは生き残りを図るため、統廃合の動きを加速させることを強いられる中、ヌータヤルビも大グループを構成しつつあるイッタラに買収されることとなります。フィンランドを代表するブランドであったアラビアも同様2004年イッタラの傘下に入ることとなり、ブランド名もイッタラで統一されて現在に至っています。

http://www.nuutajarvi.fi

Tapio Wirkkala / タピオ・ヴィルカラ

1915年、フィンランド最南端の港町ハンコ(Hanko)で生まれました。1933年からヘルシンキ工芸デザイン学校で彫刻を学び、卒業、戦後すぐ1946年よりイッタラにデザイナーとして所属しました。ミラノトリエンナーレを始め国内外のデザイン賞を獲得、プロダクトからキッチンウェア、グラフィックまで多岐に渡ってデザインを手掛けています。イッタラで発表される一連の作品には、自らのアイデンティティの源でもあるフィンランドの自然をモチーフとしたデザインが多く,そのほとんどが定番ラインナップとして知られている、フィンランドを代表する巨匠の一人です。

Kantarelli / カンタレリ (1947)

イッタラ所属後早速その才能の片鱗を見せ、1947年このカンタレリを発表し、高い評価を集めました。カンタレリはアンズタケをモチーフとした、手吹きによるハンドメイドは有機的形状のガラス器で現在もヴィンテージとして高い評価を得ています。

Tapio / タピオ (1952)

フィンランドの自然を育む水をモチーフに、水滴をデザインしたガラス器で非常にユニークな印象をあたえており、ファンの多い作品です。

Ultima Thule / ウルティマ・ツーレ (1968)

ラテン語で「北の最果て」の意味を持ち雪解け水をイメージさせる透明感あふれる、他には見られない造形をもつガラス器で、フィンランド航空機内で使用されてことで知られています。

Gaissa / ガイザ (1972)

フィンランド氷河の氷塊をイメージさせる底厚なボトムデザインは安定感に優れ、現在でもイッタラの人気定番作品です。

Puukko knife / プーッコナイフ (1960)

スカンジナビア半島北部に住むサーメ人が使用する伝統的ナイフをデザイン、ナイロンと真鍮を使った握りは安定が良く、皮製のカバーに熊の手の型押しがあるのが特徴です。完成度は非常に高くMoMAのコレクションとして展示されています。

Timo Sarpaneva / ティモ・サルパネバ

1926年、ヘルシンキで生まれました。ヘルシンキ中央工芸デザイン学校でグラフィックを学び1948年に卒業、1950年よりイッタラにデザイナーとして所属することになりました。1956年、iコレクション(i-collection)を発表、このシンプルなデザインによる一連の作品はイッタラを代表するものとなりました。また作品にデザインされた特徴ある「i」の文字は現在イッタラ社のロゴとなっており、ブランドイメージを定着させた重要なデザイナーです。カイ・フランク、ティモ・サルパネバなどと活動時期が近いこともありフィンランドの三大デザイナーとして位置付けられています。

Sarpaneva / サルパネバ (1960)

イッタラでは珍しい鋳鉄製の鍋を1960年に発表、機能、耐久性に優れているのはもちろん独特の曲線を持つ木製の取っ手は美しく、切手のデザインとしても登場したほどです。

Alvar Aalto / アルヴァ・アアルト

1898年、クオルタネで生まれました。ヘルシンキ工科大学で建築を学び1921年卒業。その後建築事務所を開き1929年には彼の名を高めた傑作、パイミオのサナトリウム(Paimio)を発表しました。家具、照明、調度品などの設計も手掛け、現在もパイオミ郊外で総合病院として利用されているこの建物はモダニズム建築が北欧で評価されたということで、エポックメイキングとなった作品でもあります。続いて幾度か中断のあったヴィープリの図書館が1935年に竣工、アアルトの特徴のひとつとなっていく木材を使った有機的な曲線で構成されるうねる天井は非常に斬新でした。モダニズム建築に北欧の伝統的な自然素材を取り入れるという、その後の彼の方向性見えた作品であります。

現代建築の巨匠として、世界中で大きな評価を得ているアアルトはモダニズムに対する人間的なアプローチを試みた作家であり、その彼独自の人間的観点から見た機能主義を実践した数々の作品は北欧モダニズム建築を大いに知らしめ、今なお多くの人を魅了しています。またその活動は建築から家具、ガラス食器などの日用品のデザイン、絵画までと多岐に渡り建築以外でも多くの傑作を残しています。

Paimio / パイミオチェア (1931)

自然と実用・機能主義を融合させようとしたアアルトの初期の傑作のひとつ。パイミオのサナトリウムに設置するために設計した椅子は、人間への優しさを備えながらも非常に機能的なデザインとなっています。座面と背もたれが一体型の成形合板(プライウッド)となるこの「パイミオ」は材料革命と評され、家具デザイナーとしてもアアルトの名を一躍有名にしました。

Stool60 / スツール60 (1933)

ヴィープリの図書館で使用するために自ら設計した、アアルトの代表作ともいえる椅子です。シンプル過ぎる構造で究極のスツールなどと呼ばれています。当時主流であったスチールなどを使ったモダンデザインと異なり、木材を素材と北欧の職人たちの木材加工技術を使ったこの作品は北欧モダニズムデザインの代表作とされ、多くの北欧のデザイナーに影響を与えました。

Aino Aalto / アイノ・アアルト

1894年ヘルシンキで生まれました。ヘルシンキ工科大学で建築を学び1920年卒業。在学中すでに出会っていたアルヴァ・アアルトと1924年結婚、建築家として非常に才能に恵まれていたアイノは夫アルヴァとの共同作業が多く、アルヴァ・アアルトの作品のほとんどには二人のサインが残されています。

彼女は実用的なシンプルさをデザインに求めており、そのデザインが評価されたのが1936年ミラノトリエンナーレでした。そこで金賞を受賞したイッタラのタンブラー、アイノ・アアルトは多くのデザイナーに影響を与えました。さらなる活躍を望まれたアイノでしたが1949年がんによりこの世を去ります、55歳でした。

Aino Aalto / アイノ・アアルト (1932)

波型の形状が特徴的なこのシリーズはタンブラーから始まりました。無駄のないデザインですが非常に使いやすく、80年以上たついまでもイッタラのベストセラーとして、多くの人に愛されています。

Maija Isola / マイヤ・イソラ

1927年リヒマキ(Riihimäki)で生まれました。ヘルシンキ中央工芸デザイン学校で絵画、デザインを学びましたが卒業後はマリメッコ(当時はプリンテクス社)にテキスタイルデザイナーとして所属。1964年にはいまや北欧デザインの代名詞ともいわれるウニッコを発表。マリメッコを有名ブランドとして押し上げるのに大きな貢献を行いました。何にも縛られない自由な発想から生まれる、明るい色合いやグラフィカルなデザインはファブリックデザイナーに今なお大きな影響を与え続けています。

SUNIKKO / ウニッコ (1964)

けしの花を大胆かつポップにレイアウトしたデザインは北欧デザインに大きな影響を与えました。公共施設、フィンランド航空などで採用されるなどフィンランドで非常に愛されるマリメッコのウニッコ柄ですが、ケネディ大統領夫人がウニッコ柄のドレスを愛用したり日本でも多くのファンをもつなど、世界中で愛されるブランドといえます。